兄も幼少期から色々と辛いことがあったはずだ。
まだ兄が就学前。父方の祖父の家で暮らしていた頃。
ちょっと悪さをすれば父方の祖父に縄で縛られて、真っ暗い倉庫にしばらく閉じ込められてたのを私は記憶している。
どんなに泣いて謝っても許してもらえず、ずっと泣いてた。
私はとてもおとなしくて大人の言いなりになるタイプだったので怒られることは少なかった。
だから祖父は私ばかり可愛がり、兄には厳しく当たっていた。
母も、そんな祖父のことが嫌いだった。他にもたくさん理由があったようだ。
母は私に祖父母の悪口を言う。それなのに「おじいちゃんにお手紙書いたら?」とか言ってくる。
母は私に祖父母の悪口を聞かせながら、それでも私に「かわいい孫」でいるように仕向ける。
私は人に懐かない冷めた子供だったから、ほぼ義務感で「かわいい孫」を演じていた。
子供心に「大人は嘘つきでわけがわからない変な生き物だ」と思っていた。今でも思っている。
両親は兄を愛していたはずだ。ただ、当時の育児法は間違いだらけだった。
やんちゃな兄はいつも叱られていた。学校では落ち着きがなく、友達とよくトラブルを起こしていた。
その度に教師も、両親も、兄を厳しく叱った。
母はよく「100叩きの刑だよ」と、泣きわめく兄のお尻を100回叩いていた。
もしくは、一時間近いお説教。
そうすれば良い子になってくれると信じていたのだろう。
あと40年遅く産まれてきたら、違う人生が待っていただろうに。
大人からは「お前はダメだ、悪い子だ、努力が足りない、もっと頑張れ」と否定され続け、
それでも友達はそれなりに多く、時々トラブルを起こしながらも学校生活も楽しんでいたようだった。
それが、6年生の時、ちょっとした失敗がきっかけで酷いイジメを受けるようになったらしい。
そこから、何もかもダメになってしまった。
私への加害が始まったのも、その頃からかも知れない。
悲しくてたまらないから、身近にいる弱い存在を支配することに向かったのかも知れない。
時々、部屋で一人で泣いてたのを知っている。
かわいそう。
悲しかったんだよな。誰にも理解してもらえなくて。
兄のことを、同情している私がいる。
一方で、ころしてやりたいと呪っている私もいる。
どっちも本当の私だし、行ったり来たり、かわりばんこに出てくる。
兄は加害者であるが、それ以前に被害者でもあった。
「昔の子育てなんてそんなもん。」「イジメなんてよくあること」ですませちゃいけないことだ。
兄は「激しい体罰」や「行き過ぎたしつけ」という不適切な養育をされたし、クラスメイトから受けたイジメ内容は紛れもない傷害事件であり、れっきとした人権侵害だ。
殺人のニュースとか見る度に「この悪魔みたいな加害者も、もしかしたら被害者だったのかも知れない」と思ってしまう。
死刑だ!!って叫ぶよりも、タイムマシンに乗ってそいつが犯罪者にならないように軌道修正してやれたらと思うけれど、私にそんな能力はないし神様でもスーパーマンでもないから、何もできない。
悲しい。
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